自己肯定の海

どんな文章を書こうと、

どんな絵を描こうと、

本当は自分自身にしか関係がない。

 

肯定はそれ以外を否定するなんて

絶対じゃない。

 

沈まないで。

浮いていればいい。

波に漂っていていい。

 

ぼやけた月が照らす水面を、

ゆらゆらと。

 

愛してる人に出会わなくていい。

寄りかかる島も、本当は要らない。

 

言葉も、本当は紡がなくていい。

ハナ歌を口ずさんでいればいい。

 

朝日が昇れば気温は上がるから、

そっと太陽に温められるといいよ。

 

誰も否定していない。

君が幸せならそれで。

 

 

うたうぼのぼ

今日はなんだか自分が嫌いで

世界で一番ブスのような気がして

いくらかも調子に乗れず、うまく笑えず

箸が落ちただけで泣いちゃいそうな夜で

誰かに抱きしめてほしくて狂いそう

その誰かが願わくば彼であってほしいのは

訳もなく彼が好きだからよ

寂しくて苦しい

こんな夜がこの歳でもあるなんて

思ってもみなかった

掻きむしって血が出ても痛くない

痛くないよ

宇多田ヒカル「初恋」を聴きながら

好きだという言葉では大雑把すぎるのです。もっと細分化した気持ちで、あなたを想っている。最良のあなたの笑顔を思い浮かべては、今すぐ傍にいないことでこんなにも胸が苦しい。今日のような雨上がりの静かな夜は気温が下がるので、わたし一人の体温では満たされない。あなたの狭い部屋のベッドを二人で占有して、更にはもっと狭いあなたの腕に抱かれたい。幸いなことにあなたの感覚を覚えている。においに安堵する。守られているようで。一瞬であろうと、掻き毟るほどに愛しいのです。父のようで母のようで、暖炉の前の犬のようで。それが今容易く手に入らない空間だと知り、思い出してはやはり泣きたくなる。メッセージひとつがあなただけは重たいわ。通知が来るたび心臓を握られるよう。正直でいたい・好きでいてほしいの激情を行ったり来たり。いつも見ていたい。けれど目線を投げれば、こちらを見ていないことも分かってしまうから、ずっとは難しい。あなたの横顔を、骨ばった手の甲を、器用そうな指先を、スケッチするようになぞる。できればそのまま絵にしたい。あなたへの恍惚をかたちにできたら、どんなに欲情するだろう。不思議ね、想う時間が長いほど、あなたに触れたときの喜びは増すの、分かっているから、この苦しさでさえ甘く、酔ってしまう。いくらでもわたしをあげたい。最高のものをあげたい。それがあなたにとっての喜びであってほしい。わたしに多少痛みを伴ったとしても、捧げたい気持ちになる。感情は生ぬるい風のようで、度数の高い甘ったるい酒のようで、完成しない鉛筆画のようで、書き足りない詩にも似ている。下がることを知らない熱のせいで泣けてくる。こんなんじゃあなたを火傷させてしまう。傷つけてしまうことは怖いようで、全てを投げかけたいようで、この欲望の根を確かめては一人でうずくまって、どうにか夢の中で済むように祈る。あなたが好きだと言っていた映画を、たどるように観るわ。全てがあなたに繋がっている。一種の視野狭窄をいつかは笑うのでしょう。ただそれさえも今は力や熱となってわたしを蝕むのでしょう。どうか今夜夢の中で。

アーバンソウル

これは遊びだと割り切ったうえで

会いたくて夢に出る 一緒に佐賀に行く

遊び笑う 楽しくて仕方がない

起きたあとの虚しさったらない

今日の天気はくもり

 

これは遊びだと割り切ったうえで

雨の日秘密の小屋でキスする

肌を重ねて少しでも分かりたい

実は分かり合ったつもりで

夏以外でも蚊帳の外

 

近づくと離れてく気がして

素直に好きと言い切ることができない

これは遊びだと?

 

どんどん積もっていくもののせいで

わたしの動きは鈍くなる

このまま死んじゃったらどうしよう

それもまたいいか

 

くもりの中を泳ぎ陽射しを探そう

そんなもんだ

いつでも間違いなく朝が来て夢は夢に

雨やんでいつか小屋は誰かの家に

逢瀬はただの記憶に なかったことのように

 

これは遊びだから割り切ったうえでね

 

背表紙

歌詞は一曲ごとに書くことができるから

同じようにタイトルをつけて思い出にしよう

 

触れたことを 二人の間に流れた時間を

2分くらいにまとめよう

今もきみは美しい人のそばで

暮らしているだろうから

早く忘れるといい

 

嘘をついたこと それでも優しくしてくれて

嬉しかったよ

寂しい夜はきみが歌った歌を引用する

シャワーの中で口ずさむね

 

話したこと 二人の間に流れた時間を

2分くらいにまとめよう

きみは今も美しい人のそばで

幸せでいてほしい

早く忘れるといい

 

そういえば、なぜ愛の歌より別れの歌が

胸を打つのか、きみは考えたことがある?

ぼくはいま考えてる